防犯カメラが街中に張り巡らされ、マイナンバーカードや電子決済が普及した現代日本において、なぜ50年もの逃亡が可能だったのか。その答えは、彼が徹底して「システムの外側」に身を置き続けたことにある。
健康保険証を持たない彼は、病気になっても病院に行くことができなかった。今回、彼が病院に駆け込んだのは、がんの痛みが限界に達し、死を覚悟したからに他ならない。言い換えれば、病に倒れるまでの間、彼は国家の監視システムに一度も引っかかることなく生き延びたのだ。近隣住民の「まさかあの人が」という言葉は、私たちの社会のセキュリティがいかに個人の「信用」という曖昧な基盤に依存しているかを物語っている。