多くの人が最も恐れているのは「家族が飛び込み事故を起こしたら、残された親や配偶者が借金を背負わされるのではないか」という点でしょう。しかし、日本の法律において「本人が犯した不法行為の賠償義務を、家族が当然に肩代わりしなければならない」という法律は存在しません。
不法行為責任(民法709条)はあくまで行為者本人に帰属する個人的な債務です。成人が単独で起こした事故について、親、配偶者、子どもであっても、法的に直接の賠償責任を負う筋合いはありません。
例外的に家族が責任を問われる可能性があるのは、以下のような極めて限定的な場面のみです。
- 未成年者の事故で親が監督義務を著しく怠っていた場合(民法714条)
- 重度の認知症や精神疾患などで責任無能力者と判定され、家族が法定の監督義務者となっていた場合
ただし、2016年の最高裁判所判決(JR東海・愛知県大府市の認知症高齢者列車事故訴訟)において、最高裁は「同居の配偶者や長男であっても、直ちに監督義務者としての賠償責任を負うわけではない」という判断を下しました。これにより、家族への責任追及のハードルは従来よりも格段に厳格化されています。