重慶の夜を語る上で、長江と嘉陵江の合流地点に立つ「洪崖洞(ホンヤードン)」を外すことはできない。かつての吊脚楼(伝統的な高床式建築)様式をモダンに再現した11層の巨大商業施設は、陽が落ちると一斉に暖色のライトアップで黄金色に染まる。まるで名作アニメの世界に迷い込んだかのような幻想的な姿は、SNS上で爆発的な拡散を続けている。
面白いのはその特異な都市構造だ。1階の道路からエレベーターで11階へ上がると、そこにも大型車が交錯する大通りが広がっている。この「1階も11階も地面」という感覚こそが重慶独特の迷宮構造だ。夜の洪崖洞を下から見上げると、重なる屋根と赤提灯の光が崖に沿って天へと続いていく。観光客が溢れる千千門大橋の上からは、川面に映る逆さの光城をカメラに収めようと、夜遅くまでシャッター音が響き渡っている。