招き猫という独自のアイコンがどこから生まれ、どのようにして庶民の生活に浸透したのか。その起源を探るうえで欠かせないのが、東京都世田谷区の豪徳寺と台東区の今戸神社という二つの歴史的聖地である。鷹狩りの帰路に猫の招きによって雷雨を免れた井伊直孝の伝説で知られる豪徳寺は、白一色のシンプルな「招福猫児(まねぎねこ)」を祀り、質素でありながら強い信仰の姿を現代に伝えている。
一方で今戸神社は、江戸時代に今戸焼の職人が作り出した対の猫が発祥とされ、良縁成就や夫婦円満を祈願する人々の憩いの場として知られる。これら各地の神社仏閣で授与されてきた授与品や縁起物は、職人たちの手作業によって温かみのある姿へ昇華されてきた。各地の歴史的背景を知ることで、美術館に集められた作品一品一品が持つ歴史の重みがより一層際立つ。