フットボール界におけるタトゥーの概念を根底から変えたパイオニアといえば、間違いなくデビッド・ベッカムだろう。1990年代後半から2000年代にかけて彼が披露した数々のタトゥーは、それまで一部のアウトロー的なイメージが強かったボディアートを、洗練されたグローバルカルチャーへと昇華させた。妻ヴィクトリアの名や天使のモチーフは、世界中の若者たちの模倣の対象となった。
彼の半生を振り返るベッカム(Netflixドキュメンタリー)でも描写された通り、過剰なメディアスクルティニ(監視)に晒され続けた男にとって、タトゥーは自らの意思でコントロールできる唯一の「聖域」だったのかもしれない。
一方で、北欧のカリスマであるズラタン・イブラヒモヴィッチは、タトゥーを社会への強烈なメッセージとして用いた。飢餓に苦しむ世界中の人々の名前を一時的に身体中に墨入れしてピッチに立ち、ゴール後にユニフォームを脱ぎ捨てて飢餓撲滅を訴えたエピソードは伝説となっている。背中に彫られた巨大なライオンは、彼の圧倒的なエゴと不屈の闘志の象徴だ。