今回の法改正における最大の眼目は、国際標準に準拠した衛生管理手法「HACCP(ハサップ)」の完全義務化である。大量生産を行う工場だけでなく、一人で切り盛りする個人工房に至るまで、原材料の受け入れから出荷までの危険要因を分析し、記録を継続することが義務付けられた。小規模事業者にとっては、毎日の温度管理や工程チェックの書類作成自体が重い事務負担となっている。
こうした状況を受け、現場の負担軽減を目指すHACCP完全義務化対策プロジェクトなどの取り組みが動き出している。しかし、制度の理念と現場の実情との間には依然として深い溝が存在する。単なる漬け込み作業であっても、近代的な食品製造業と同等の管理基準が求められるため、高齢の職人が書類作業に追われて疲弊し、廃業へと追い込まれる構造的課題が浮き彫りになっている。