1960年代後半、深夜放送ブームの狂騒の中で産声を上げたのが『パックインミュージック』だった。TBSラジオの深夜を彩ったこの伝説的番組で、桝井論平が放つ独特の空気感は群を抜いていた。スタジオには夜な夜な全国の受験生や若者から膨大な手紙が届き、フロアを埋め尽くしたという。
当時の舞台裏は、まさに試行錯誤と情熱の連続だった。決まった台本通りに進行する従来のラジオの枠組みを打ち破り、リスナーから寄せられた生の悩みに正面から向き合う。時にレコードの針を止め、マイク越しに静寂すら味方につける緊張感溢れる演出は、深夜のリスナーたちを虜にした。深夜2時の赤坂のスタジオは、熱気と若者の衝動が交差するメディアの実験場であった。