殊能将之が遺したもう一つの巨大な遺産が、個人ウェブサイト「敷居の高さ」で連載されていたブログ記事をまとめた『読書日記 2000-2009』です。古今東西のミステリ、SF、海外文学から料理本、古典に至るまで、年間数百冊を読破する圧倒的な読書量と鋭利な批評眼が記録されています。
日記の中で語られる創作論や読書論には、数々の印象的な言葉が散りばめられています。「小説を書くことは、読者に対する徹底的なサービスでなければならない」という姿勢は、過激な実験作であっても常にエンターテインメントとしての歓喜を追求した彼の作風そのものでした。
辛口でありながら対象への深い愛に満ちた書評群は、希代のブックガイドとしても機能しており、没後も多くの愛読者に読み継がれるバイブルとなっています。