現地コーンウォールの古いパブを訪ね、地元の老シェフに話を聞いた。「日本人旅行者がよく『ジブリのパイだ』と言ってやってくるよ」と笑う。しかし、彼らが口をそろえて抱く疑問がある。「なぜ頭を切り落とさないのか?」という点だ。
シェフが明かした真相は極めて明快だった。「頭と骨こそが、天然の旨味調味料なんだ。頭を落としてしまえば、イワシの濃厚な味わいはパイの中で完結しない」。焼き上がった際に生地の表面へにじみ出る魚油は、パイ皮をパリッと芳醇に仕上げる役割も果たす。つまり、ビジュアルのインパクトは二の次であり、極限状態での栄養価と美味しさを極限まで高めるための職人技術だったのである。