市場の食堂と聞けば、手頃な海鮮丼やすばやく提供される定食を連想する方が多いかもしれません。しかし、豊洲市場の高はしが提供している体験は、そうした日常の延長線上にあるランチとは根本的に異なります。店主・高橋良和氏が掲げる哲学は「本当に旨い魚の味を、妥協のない最高の仕立てで伝えること」。その一貫した美学こそが、遠方から足を運ぶ食通たちの心を掴んで離さない最大の理由です。
屋号に「あんこう屋」と掲げられている通り、冬場の名物であるアンコウ料理をはじめ、春の鰆や初鰹、夏の鮎や鱧(はも)、秋の戻り鰹やサンマ、冬のとらふぐや白子など、日本の四季を映し出す極上の魚介が毎日入荷します。豊洲市場内の有力仲卸と長年築き上げてきた強固な信頼関係があるからこそ、一般の高級割烹でも滅多にお目にかかれない特級品の魚が集まり、それらが最も適した火入れと味付けで供されます。
「魚本来の脂の甘みや繊維の弾力を殺さず、いかに引き出すか」に心血を注ぐ調理スタイルは、多くの料理評論家やシェフからも敬意を集めています。調味料で誤魔化さない端正な煮汁、炭火や絶妙な遠火でじっくり焼き上げる焼き魚、一切れの切り口にまで神経を行き届かせた刺身のクオリティは、まさに市場の最高峰と呼ぶにふさわしい仕上がりです。