投球動作において、ボールのリリーススピードを高める最大の要素は「運動連鎖(キネティックチェーン)」です。下半身で生み出された地面反力は、骨盤、体幹、胸郭、肩甲骨、腕、そして指先へと順番に伝達されます。大谷選手のピッチングにおいて、肩甲骨の柔軟性はまさにエネルギーを増幅させる「パチンコのゴム」のような役割を果たしています。
投球フォームの中で腕が最も後ろにしなる瞬間を、専門用語で「最大外旋位(MER: Maximum External Rotation)」と呼びます。大谷選手の場合、肩甲骨が背骨側へ深く引き寄せられ(内転)、胸郭が大きく開くことで、腕がまるで鞭のように後方へしなります。このしなり幅(可動域)が大きければ大きいほど、ボールに力を加える加速距離が長くなり、結果として160kmを超える異次元の球速が生まれるのです。
さらに、この肩甲骨の柔軟性は打撃フォームにも絶大な好影響を与えています。バットスイングの際、肩甲骨が肋骨の上を滑らかにスライドすることで、インコースの厳しい球でも懐深くボールを呼び込み、身体の開きを抑えたまま強烈なヘッドスピードを生み出すことが可能になります。大谷選手の「二刀流パフォーマンスの秘密」の中核には、この肩甲骨と胸郭の連動性が常に存在しています。