「歌はいいね」という台詞の元ネタは、1995年から1996年にかけて放送された庵野秀明監督のアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の第24話「最後のシ者」です。この言葉を発したのは、第17使徒タブリスでありながらフィフスチルドレンとしてネルフ本部に送り込まれた少年、渚カヲル(CV:石田彰)でした。
夕暮れ時の第3新東京市、瓦礫と化した街の夕景のなかで、主人公・碇シンジの前に初めて現れたカヲルが鼻歌を歌いながら語りかける場面は、アニメ史に残る屈指のファーストコンタクトとして語り継がれています。
ファンコミュニティやSNS上では冒頭のフレーズのみが切り取られて流通しがちですが、作品の根幹に関わるセリフ全文は以下の通りです。
「歌はいいね。歌は心を潤してくれる。リリンが生み出した文化の極みだよ。そう感じないかい? 碇シンジくん。」
ここで登場する「リリン」とは、作中において使徒側から見た「人類」を指す呼称です。単独で完全な生命体として完結している使徒とは異なり、肉体的にも精神的にも不完全で、常に他者との摩擦や孤独に苦しみ続ける人類。その人間たちが互いの心の隙間を埋めるために生み出した創作物こそが「音楽(歌)」であり、カヲルはその営みを「文化の極み」と最大級の敬意をもって評したのです。
さらに2012年に公開された映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』においても、傷心のシンジに対してカヲルがピアノの連弾を提案し、音楽を通じた心を通わせるアプローチとしてこの思想がより立体的に描かれました。