土偶が作られた目的については、長年「母神・地母神信仰説」が有力とされてきました。豊かな乳房や張り出した腰つき、くびれたウエストなど、女性の身体的特徴を強調することで、生命の誕生、多産、そして大地の豊穣を祈願したという考え方です。
これに対し、近年大きな注目を集めたのが独立研究者・竹倉史人氏らが提唱した「植物の精霊説(植物擬態説)」です。この仮説では、遮光器土偶の造形は人体ではなく、縄文人の主食であったトチノキの実(トチの実)の断面や発芽の様子をかたどったものであり、食料資源の豊作を祈った呪術具であると主張されました。
学会内では植物説に対する慎重な意見や反論も多く議論が続いていますが、「縄文人が身の回りの自然物や生命力に対して抱いていた畏敬の念」が形になったという根底の解釈においては、女性神説とも通底しています。
また、出土する土偶のほとんどが手や足、首などを折られた不完全な状態で見つかる点も見逃せません。これは偶然壊れたのではなく、「破壊の祭祀」が行われていたことを物語っています。病気や怪我のある部位の身代わりとして土偶の該当部分を折って厄を落とした、あるいは「一度死なせて大地に還すことで、新たな生命として再生させる」という死生観に基づいていたと考えられています。