赤沢森林鉄道の真価は、単なるリゾートトロッコにとどまらない「生きた産業遺産」としての重厚な歴史にあります。木曽森林鉄道は1916(大正5)年に小川線が開通して以来、木材輸送の大動脈として網の目のようにレールが敷設され、最盛期には総延長数百キロメートルに達しました。
その後、林道の整備とトラック輸送への転換に伴い、1975(昭和50)年に全国の国有林森林鉄道として最後に全廃を迎えました。しかし、地域住民や鉄道愛好家の熱意によって1987年に保存運行が実現し、現在の観光鉄道へと再生を遂げた経緯があります。
林内の「森林鉄道記念館」に静態保存されているアメリカ・ボールドウィン社製蒸気機関車(1号機)は、その希少性と技術的価値から国の重要文化財に指定されています。大正期に輸入され、過酷な山岳路線を力強く走破した往年の姿は、見る者に近代日本のものづくりの息吹を伝えてくれます。
現在トロッコが走る区間以外にも、園内の散策路沿いには古い橋梁やトンネル、苔むしたコンクリート橋脚、分岐ポイントのレールなど、木曽森林鉄道の廃線跡と遺構が数多く点在しています。列車を降りた後にこれらの遺構を辿るフィールドワークは、歴史ファンにとっても極めて満足度の高い体験となります。