米大統領の来日に際し、多くの国民が抱く最大の疑問が「なぜ羽田空港ではなく、米軍横田基地(東京都福生市など)に飛来するのか」という点です。過去には国賓としての公式訪問時に羽田空港へ着陸した実例もあるものの、実務的な首脳会談や安全保障上の理由から、エアフォースワンの横田基地飛来が圧倒的多数を占めています。
防衛省関係者や航空専門家の分析によると、横田基地が選ばれる背景には大きく分けて3つの決定的な要因が存在します。
第1に、日米地位協定に基づく完全な警備主権の確保です。横田基地は米空軍が管理する軍事施設であり、機体周辺の警備プロトコルを米シークレットサービス(USSS)および米軍が100%掌握できます。民間航空機が過密に発着する羽田空港では、一般旅客の動線遮断や駐機場周辺の完全封鎖に多大な制約が生じますが、横田基地であれば最高機密を保ったまま大統領を護衛できます。
第2に、大統領専用ヘリ「マリーンワン」による都心への直行ルートです。横田基地に到着した大統領は、タラップを降りて即座に待機中のマリーンワン(VH-3DまたはVH-92A)へ乗り移り、東京都港区六本木にある米軍施設「赤坂プレスセンター(ハーディー・バラックス)」のヘリポートへ向かいます。陸路を使うことなくわずか15分から20分で都心部へ進出できるため、地上でのテロリスクや首都高速の渋滞リスクを根本から回避できる仕組みです。
第3に、羽田空港における民間定期便への影響回避が挙げられます。大統領専用機の離着陸時は前後数十秒から数分間にわたり空域が実質的に制限され、民間定期便の大規模な遅延やダイバート(目的地変更)を誘発します。日米両政府は民間航空への経済的影響を最小限に抑える観点からも、横田基地を第一選択肢として運用しています。