世界的なスペシャルティコーヒー産業の台頭により、果実味や華やかな酸味を押し出した浅煎り・中煎りが主流となった昨今のカフェシーン。だが、この店は頑なに深煎りの美学を貫き通している。
京都喫茶文化は古くから、独自の深煎りカルチャーを育んできた。学生や学者、文豪たちが夜遅くまで議論を交わし、思索にふけるための相棒として、濃く強い一杯が必要とされてきた歴史がある。軽快にテイクアウトして歩き飲みするコーヒーとは一線を画す。一滴一滴に時間を閉じ込めたような重厚な味わいは、せわしない日常のスピードを強制的に緩めてくれる。