プロ野球選手として円熟味を増す中で訪れた、海外FA権行使のタイミング。アメリカ出身の父親を持つ九里投手にとって、海を渡りメジャーリーグベースボールの強打者たちと対峙することは、少年の頃から胸に秘め続けた宿願であった。
慣れ親しんだ広島の地を離れ、言語や文化の異なる異国へ飛び込む決断は、選手単独の意志だけで下せるものではない。子どもの教育環境や生活基盤の劇的な変化を伴う重大な局面で、背中を押したのは妻の「挑戦せずに後悔する姿は見たくない」という力強い一言だった。環境の変化を恐れず、夫の夢を家族全体の夢として受け止める覚悟が、彼を新たなステージへと押し出したのである。