荻窪のブックカフェ「6次元」には、今年も多くの報道陣とファンが詰めかけた。しかし、かつてのような悲鳴に近い落胆の声は、年を追うごとに穏やかな苦笑いへと変化している。集まったファンの一人は「受賞してほしい気持ちはあるけれど、もはや受賞しないこと自体が、秋の訪れを告げる儀式のようになっている」と語る。この「受賞待ち」という行為自体が、すでに一つのエンターテインメントとして消費されているのだ。
メディアの報道姿勢も、かつての過熱ぶりから徐々に変化を見せている。速報のための特設スタジオを用意するテレビ局は減ったものの、SNS上での盛り上がりは健在だ。ハッシュタグ「#村上春樹」は、発表の数日前からトレンド入りを果たし、世界中の読者がそれぞれの「推し作品」を語り合うプラットフォームとして機能している。