直接法を選択することで跳ね上がるのが性感染症(STI)の感染リスクだ。シリンジ法であれば物理的な粘膜接触をある程度回避できるが、直接法では性器粘膜や体液が直接触れ合うため、感染経路が完全に開かれてしまう。
ドナーが提示する「性病検査陰性証明書」を鵜呑みにするのは極めて危険だ。検査キットの結果用紙やWebのマイページ画面は容易に改ざんが可能であり、検査直後の危険な性行動によって「検査時は陰性だったが提供時は陽性」というウインドウ期(潜伏期間)のすり抜けも頻繁に起こる。
特に近年問題視されているのが以下の感染症だ。
・梅毒(Syphilis):国内での感染報告数が高水準で推移しており、感染すると母体だけでなく胎児に先天性梅毒を引き起こし、死産や重篤な奇形を招く危険がある。
・HIV・B型/C型肝炎:無症状のまま進行し、母子感染によって子どもの生涯にわたる健康を脅かす。
・クラミジア・淋菌・マイコプラズマ:骨盤腹膜炎や卵管閉塞を引き起こし、将来的な完全不妊の原因となる。
公的な精子バンクでは、精子を一定期間凍結保存し、半年後の再検査で感染症が完全に陰性であることを確認してから提供する「検疫期間」を設けている。安全管理が一切存在しない個人間の直接法は、生まれてくる赤子の命を無防備に危険へ晒す行為といえる。