亀山社中のメンバーとして名が残るのは、坂本龍馬を筆頭に、近藤長次郎、沢村惣之丞、高松太郎、千屋寅之助、新宮馬之助、長岡謙吉らである。いずれも脱藩浪士や海軍操練所の同窓生が中心で、商人出身者はほとんどいない。この点が「日本初の商社」という呼称に違和感を生む最大の理由だ。
商社であれば帳簿・資本金・配当・取引先との契約書が残るはずだが、亀山社中にそのような会計資料はほぼ存在しない。残っているのは書簡と調達品の受領記録であり、これは商社というより「政治的目的を持った調達・運送組織」の性格を示す。2026年現在、長崎歴史文化博物館の展示解説でも「日本初の商社と紹介されるが、実態は政治結社に近い」と注記されるようになった。