「のび太」という一見ユニークで素朴な名前には、両親の深い愛情と人生への祈りが込められています。名作として名高い「ぼくの生まれた日」では、両親から理不尽に叱られたと思い込んだのび太が、「自分は本当にこの家の子供なのか」と疑念を抱き、タイムマシンで自分が生まれた病院へ向かうところから物語が始まります。
そこで目にしたのは、生まれたばかりの我が子を見て歓喜に震える父・のび助と母・玉子の姿でした。のび助は、病院の庭にそびえ立つ大きな楠(アニメ版の一部リメイクでは桜の木など)を見上げながら、我が子の未来に思いを馳せます。
「すくすくとどこまでも伸びてほしい。心の広い、逞しい人間に育ってほしい」
知力や財力を誇示するような名前ではなく、ただただ健康で健やかに、どこまでも自分らしく伸びていってほしいという純粋な願いから「のび太」と名付けられたのです。この名付けの真相を知ったのび太が、赤ん坊の自分を見つめながら涙を流し、現代へ戻って素直に両親へ感謝を伝えるラストシーンは、半世紀以上にわたり読者の胸を打ち続けています。