この極めて難解なキャラクターに命を吹き込んだのが、俳優・村上虹郎だ。彼の独特なハスキーボイス、気怠げな視線の動かし方、そして肩の力の抜けた立ち振る舞いは、原作のチシヤ以上にミステリアスなオーラを放っている。もし彼以外の役者が演じていたら、チシヤは単なる「嫌味なインテリ」で終わっていたかもしれない。
村上の演技は、セリフの行間に多くの感情を語らせる。沈黙の瞬間、あるいはふとした瞬間の目線の逸らし方だけで、チシヤの過去の孤独や、医師としての葛藤を表現してみせた。この繊細なアプローチが、キャラクターの立体感を何倍にも膨らませたことは疑いようがない。