なぜ口から血が出るに至ったのか、その背後には見過ごしてはならない重大な基礎疾患が潜んでいます。日本国内の臨床統計をもとに、それぞれの代表的な原因疾患を検証します。
喀血の主な原因:気管支拡張症から肺がんまで
気道粘膜の毛細血管や、太い気管支動脈が破綻することで喀血が発生します。
- 気管支拡張症・非結核性抗酸菌症(NTM症):中高年女性を中心に近年増加傾向にある感染症や慢性炎症。血管が増生・脆弱化し、慢性的な咳とともに鮮血を喀出します。
- 肺がん:腫瘍組織が周囲の血管を侵食することで出血します。「少量の血痰が何週間も続く」初期症状から、突然の大喀血に至るケースまで様々です。
- 肺結核:かつてほどの頻度ではないものの、結核後遺症の空洞病変や再燃によって太い血管が破れる「ラスムッセン動脈瘤」の破裂は大喀血の原因となります。
- 肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)や心不全:肺の循環障害や高度のうっ血により、ピンク色の泡状の喀血を生じることがあります。
吐血の主な原因:胃潰瘍・十二指腸潰瘍と食道静脈瘤
上部消化管(食道・胃・十二指腸)の粘膜欠損や血管瘤の破綻が引き金となります。
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍:ピロリ菌感染や解熱鎮痛薬(NSAIDs)の長期服用によって胃粘膜が深く削れ、太い動脈が露出・破綻して大出血を起こします。
- 食道静脈瘤・胃静脈瘤の破裂:肝硬変などの慢性肝疾患により、行き場を失った門脈血流が食道や胃の粘膜下に迂回してコブ(静脈瘤)を作り、それが耐えきれず破裂します。痛みを伴わずに突如として洗面器一杯分もの大量出血をきたす危険な病態です。
- マロリー・ワイス症候群:激しい嘔吐を繰り返した際、腹圧の上昇によって食道と胃の接合部付近の粘膜が縦に裂けて出血します。飲酒後の嘔吐に多く見られます。
- 胃がん:進行がんの潰瘍面からの出血により、持続的な貧血やコーヒー残渣様の吐血を招きます。