現在では感情の昂りを表す感嘆詞のように使われる「えぐい」ですが、その起源は古代から続く日本語の味覚表現にあります。
「えぐい」の元々の意味は、山菜やタケノコなどを食べた際に感じる、喉を強く刺激するような不快な渋みや苦味、いわゆる「灰汁(アク)の強さ」を指す形容詞です。漢字表記では「蘞い」または「醰い」と書き、舌や喉がチクチクと痺れるような刺激味そのものを「えぐ味(えぐみ)」と呼びます。
この味覚表現が、人の性質や事態の厳しさを表す比喩へと変化したのが語源のルーツです。「灰汁が強くて刺激がきつい」という物理的な感覚から、次第に「人のやり方や性格にあくの強さがあり、情け容赦がない」「無慈悲でトゲがある」「あくどい」といった精神的・状況的な意味合いを帯びるようになりました。
特に上方(関西地方)においては古くから方言(関西弁)として定着しており、「そんなえぐいこと言わんといて」「やり方がえぐいわ」といった形で、度が過ぎて残酷な様子や、あくどい商売・駆け引きを指す言葉として日常的に親しまれてきました。これが1980年代から2000年代にかけて、関西出身のお笑い芸人やテレビ番組の全国的な普及、さらにインターネットの掲示板文化を通じて全国へと伝播し、現代の若者言葉へと変遷を遂げていったのです。