結論から言えば、終末期に生じるせん妄は、生命の危機が差し迫っている重要なサインの一つです。緩和ケアの臨床現場では、悪性腫瘍(がん)や重度不全症などの患者のうち、亡くなる前週には約50%、直前の数日間には70〜80%以上の患者にせん妄が発生すると報告されています。
医学界では、回復が見込める一時的なせん妄と区別して、生命予後が極めて限られた段階で生じるものを「終末期せん妄」と呼びます。終末期せん妄が現れた場合、一般的な余命の目安は数日から長くて数週間程度と予測されるケースが一般的です。これは病状の悪化に伴い、肝臓や腎臓の機能不全、脱水、電解質異常、脳血流の低下などが複合的に進行し、脳が正常な情報処理を行えなくなっている状態を示しています。
ただし、せん妄が出現したからといって、一概に「数時間以内に亡くなる」という意味ではありません。急激な意識の変化に驚いてパニックに陥るのではなく、「身体が限界まで頑張っているサイン」と捉え、残された時間をどのように穏やかに過ごすかへ意識をシフトしていく視点が求められます。