作品をより深く味わうために知っておきたいのが、作者・武内直子先生がちりばめた緻密な裏設定の数々だ。実は主人公・月野うさぎの誕生日である6月30日は、武内先生自身の家族の誕生日や身近な人物のデータを反映させたという有名なエピソードが存在する。家族構成や性格のディテールにも、実生活の温かな観察眼が投影されているのだ。
さらに、うさぎの前世である「プリンセス・セラニティ」や未来の姿「ネオ・クイーン・セラニティ」にまつわる設定には、ギリシャ神話の月の女神セレーネとエンドゥミオンの伝説がモチーフとして組み込まれている。泣き虫でおっちょこちょいな女子中学生が、全宇宙の命運を担う包容力に満ちた女王へと成長していく軌跡――その重厚なバックストーリーこそが、大人になった読者をも惹きつけて止まない理由だろう。