嶋津輝氏の名を広く一般の読書界に知らしめたのが、長編小説『襷をかける』です。本作は第171回直木三十五賞の候補に堂々ノミネートされ、選考会でもその骨太なドラマ性と丁寧な時代考証が大きな話題を呼びました。
物語の舞台は、戦前から昭和の高度経済成長期にかけて激動の時代を迎えた東京・銀座の花柳界と着物・美容業界。女性の着付けや髪結い、和装文化を支える職人たちの矜持と葛藤、そして女同士の情念と連帯が、匂い立つような臨場感で描かれます。単なるノスタルジーにとどまらず、「働くこと」「自立すること」の本質を鋭く抉り出した名作として、文芸ファンの間で今なお語り継がれています。