『キン肉マン』の連載が『週刊少年ジャンプ』でスタートしたのは1979年のことです。当時、原作担当の嶋田隆司先生と作画担当の中井義則先生のコンビ「ゆでたまご」は、自身が愛してやまなかった吉野家の牛丼を主人公の大好物として劇中に登場させました。「牛丼一筋300年、早いの、うまいの、安いの〜」という軽快なフレーズとともに描かれた牛丼愛は、またたく間に読者である子供たちへと伝播していきます。
運命的な巡り合わせだったのは、当時の吉野家が直面していた過酷な経営状況でした。吉野家は急速な店舗拡大の失敗や過度なコスト削減による味の低下が祟り、1980年に会社更生法を申請(事実上の倒産)。企業存亡の危機に立たされていたのです。そんな窮地を救ったのが、1983年にスタートした『キン肉マン』のテレビアニメ化でした。
アニメ化による爆発的なヒットによって、それまで「サラリーマンのファストフード」というイメージが強かった牛丼店にファミリー層や子供たちが殺到。吉野家が見事に再建を果たす原動力となったのは疑いようのない事実でした。特筆すべきは、ゆでたまご先生側がこの膨大な宣伝効果に対して一切の宣伝料を受け取らず、完全な無償の善意で吉野家の名前を使い続けていた点です。