和紙ちぎり絵の完成度を決定づけるのは、画材となる和紙の選定にほかならない。長繊維の楮(こうぞ)を原料とした手漉き和紙は、指で引きちぎった際に「長毛(ちょうもう)」と呼ばれる豊かな毛羽立ちを生む。この白い繊維の毛足こそが、秋の朝霧や夕暮れの柔らかな光線を表現するための不可欠な要素となる。
落水紙の持つ透かし模様を背景の青空や雲に見立て、手染め楮紙の不揃いな色むらを落ち葉のまだら模様に充てる。職人が一枚ずつ染め上げた和紙には、工業製品にはない偶発的な美が宿っており、作者はその偶然性を拾い上げながら画面を構築していく。