古典といえば難解な教養書というイメージを抱きがちだが、その認識は改める必要がある。現在、古典のスタンダードである岩波文庫版のみならず、現代語訳やビジュアル解説本がAmazon Kindleなどの電子書籍プラットフォームで手軽に入手可能となり、20代から40代のビジネスパーソンを中心に読者層が急拡大している。また、国立国会図書館のデジタルコレクションで原本の美麗な和装本を誰でも閲覧できる環境が整ったことも、歴史的テキストへの心理的距離を一気に縮めた。
メディア空間での関心も高い。NHKオンデマンドで配信される歴史・健康教養番組では、益軒のライフスタイルや江戸の医学史を取り上げたエピソードが根強い再生数を記録している。テクノロジー主導のウェルネスブームが一巡し、過度なデータ管理に息苦しさを感じた人々が、「自分の感覚を取り戻すための知恵」として古典へと回帰している潮流がはっきりと見て取れる。