氷室京介がステージからの降板を決断した最大の契機は、2014年7月に山口県で行われた野外ライブでの突然の告白でした。激しい雨が打ちつけるステージ上で語られた「ライブ活動休止」の理由は、長年にわたって抱えていた耳の不調(難聴)でした。
医学的見地や当時のWOWOW特別インタビューで本人が赤裸々に明かした証言によると、発症はソロ活動の初期にまで遡ります。右耳の難聴から始まり、その後左耳にも不調が波及。特定の音域が聞き取りにくくなるだけでなく、音がズレて二重に聴こえる「トーンデフ(音痴化)」に似た症状に苛まれていました。ライブハウスや巨大スタジアムの爆音に晒され続けたトップシンガーならではの職業病ともいえる過酷な代償でした。
「プロとして自分が納得できるクオリティのパフォーマンスをファンに届けることができなくなった」。この言葉に、彼の引退理由の真相が集約されています。妥協を何よりも嫌い、100点満点以外のステージを観客に見せることを自らに許さない――その凄絶な美学こそが、彼を「LAST GIGS」へと向かわせた決定打でした。
現在における難聴の病状については、大音量のモニタースピーカーや歓声が飛び交う過酷なコンサート空間に耐えうる状態への回復は医学的にも極めて難しいとみられています。しかし、静かなスタジオ環境や日常会話においては適切なコントロールがなされており、日常生活に深刻な支障をきたしているわけではないことが、周囲の関係者を通じて伝えられています。