日本における声優マネジメントの礎を築いた青二プロダクションとの関わりも、彼女のキャリアを語る上で欠かせないピースだ。声優という職業の地位がまだ確立されていなかった時代、俳優が声の仕事を手がける意義を現場で証明し続けた。テレビの普及とともに押し寄せた海外ドラマや洋画劇映画の日本語吹き替えにおいて、彼女の端正かつ芯のある語り口は、海を越えた名優たちの演技に違和感なく溶け込んだ。
「声だけで人物の背景や人生の哀歓を表現する」という難題に、彼女は徹底したリアリズムで挑み続けた。画面上の俳優の呼吸を寸分違わずトレースし、母国語以上の感情を乗せる技法は、まさに吹き替え草創期の先駆者たちだけが持ち得た研ぎ澄まされた職人芸だった。