田沢湖の湖畔にいまも色濃く残るのが、永遠の若さと美しさを求めた美少女「辰子姫」の哀しい物語です。古くから伝わる伝説・民話によると、辰子はその容姿が衰えることを恐れ、大蔵観音に百日百夜の祈りを捧げました。満願の日、「満ち出でる泉の水を飲め」との神託を受けた彼女は、山奥の泉に辿り着き、渇きを癒すかのように水を飲み続けます。しかし、どれほど飲んでも乾きは癒えず、気がついたときには恐ろしい龍へと姿を変えていたのです。
己の運命を悟った辰子はそのまま田沢湖の主となり、湖底へと身を沈めました。しかし、この物語は単なるおとぎ話に留まりません。欲望の果てにある孤独や、自然への畏怖を象徴する悲劇として、今なお人々の心に強く響きます。なぜ彼女は龍にならざるを得なかったのか。一説には、自然の猛威と人間の無力さを後世に伝えるための警鐘だったとも言われており、物語の裏には人間の美への執着と自然崇拝が深く結びついた真実が隠されています。