田中好子さんが最初に乳がんの診断を受けたのは、1992年のことでした。当時36歳。女優として脂が乗り始めていた時期です。左胸に発覚した小さな病変は摘出手術によって一旦は落ち着いたものの、その後も再発や他部位への転移と向き合う過酷な歳月が始まりました。
しかし、彼女はその事実を芸能関係者や世間に一切明かしませんでした。病を理由に役柄が制限されることや、周りに無用な気遣いをさせることを何より嫌ったからです。治療を受けながらドラマや映画の撮影に挑み、笑顔を絶やさないそのプロ意識は、まさに驚異的と言わざるを得ません。重い病を抱えているとは微塵も感じさせない佇まいが、女優・田中好子の矜持でした。