多くの人が「手早く済ませたい」と頼りがちな電子レンジ解凍ですが、水産加工の現場や調理科学の知見から見ると、最も避けるべき選択肢です。マイクロ波は水分に反応して分子を振動させますが、形状や厚みが不揃いなエビ、イカ、貝類では加熱ムラが極端に発生します。中心が凍ったまま端部だけが沸点に達し、タンパク質が急激に熱変性を起こして硬化。その結果、細胞膜が破壊されて水分が激しく噴き出し、シーフードミックスが縮む理由の決定打となってしまいます。
「レンジがダメなら流水で」と、水道水をそのまま袋の上から、あるいは直接身に当てて解凍するケースも後を絶ちません。しかし、ここにも見落としがちな落とし穴が存在します。海で育った魚介類の体内塩分濃度は約3%前後に保たれています。そこに塩分を含まない真水(浸透圧ゼロ)を直接注ぐと、浸透圧の差によって水分が細胞内へ無理やり浸入し、耐えきれなくなった細胞膜が破裂します。
その結果、グルタミン酸やグリシン、アデノシン一リン酸(AMP)といった貴重な旨味成分が真水と共に外へ流れ出るという流水解凍で旨味が抜ける経緯をたどります。さらに、水産品特有の生臭み成分であるトリメチルアミンが肉全体に回り、味の抜けたスポンジのようなパサパサの食感だけが残る結果になります。