「山の民」の強さは、整然とした平地の軍略を根底から覆す野生の暴力にある。陣形や兵法を無視し、切り立った城壁を素手で駆け上がり、敵陣の中枢へと一気に雪崩れ込む。その筆頭が、鳥獣の仮面を被り、二刀流を振るうバジオウだ。
かつて山中で獣として育ち、楊端和に敗れて人間性を取り戻したバジオウ。彼が理性のタガを外した際に見せる戦闘力は、作中でも屈指の破壊力を誇る。橑陽の戦いにおいて、楊端和を背負いながら数十メートルの谷を飛び越え、追手を単身で殲滅した死闘は読者の語り草となった。
タジフの怪力、シュンメンの跳躍力、そして戦況を一変させる楊端和自身の圧倒的カリスマ。自らの血を流すことを厭わず、仲間の死を力に変えて前進するその姿は、合理性を極めた秦軍の将兵たちをも戦慄させる。