日本において、ディープフェイク動画の作成および拡散行為は法的責任を問われる。しかし、現行の法体系がAI時代の急速な進化に完全に対応できているかといえば、疑問が残る。
刑法における適用条文
偽動画によって被害者の社会的評価を低下させた場合、刑法230条の「名誉毀損罪」が適用される。3年以下の懲役若しくは禁錮、または50万円以下の罰金が科される。また、公然と人を侮辱した場合は「侮辱罪」に該当する。さらに、わいせつな合成画像を不特定多数に閲覧可能な状態にした場合、「わいせつ電磁的記録等送信配布罪(刑法175条)」の成立も考えられる。
民事上の権利侵害
民法上では、本人の承諾なく肖像を使用されない権利(肖像権)や、タレントの持つ顧客吸引力を排他的に利用する権利(パブリシティ権)の侵害にあたる。損害賠償請求や差し止め請求が可能だ。
現行法が直面するハードル
課題は山積みである。第一に、作成者の匿名性だ。VPN(仮想プライベートネットワーク)を経由し、海外のプラットフォームに投稿された場合、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求には膨大な時間とコストがかかる。第二に、日本には「非同意ポルノ作成・所持そのもの」を直接処罰する包括的な単独法が存在しない点だ。欧米諸国と比較して法整備の遅れが指摘されている。