食肉文化や乳製品の領域においても、両者の特性は大きく異なります。日本の食卓で親しまれている羊肉料理といえばジンギスカンですが、「ジンギスカン 羊肉 ヤギ肉」のどちらを使うのか、肉質や風味の差について疑問を抱く声も少なくありません。
ジンギスカンで使われるのは基本的に羊肉(ラム・マトン)です。羊肉は脂肪融点が約42〜44度と人の体温より高く、脂肪が体に吸収されにくい特徴があり、カルニチンを豊富に含みます。生後1年未満の「ラム」は柔らかくクセが少ない一方、成長した「マトン」は特有の芳醇なミルク香と野性味を帯びます。
これに対し、沖縄県や奄美群島で「ヒージャー」として親しまれるヤギ肉(ピンザ・山羊肉)は、羊肉とは全く異なる野性的な強い芳香と弾力を持ちます。ヤギ肉は極めて高タンパク・低脂質・鉄分豊富で、独特の力強い風味があるため、沖縄では刺身や山羊汁としてニンニクやヨモギ(フーチバー)を薬味に添えて煮込む調理法が伝統的に定着しています。
さらに、ヤギミルクと羊乳の成分比較を行うと、栄養学的な特徴が浮き彫りになります。
ヤギミルクは脂肪球が牛乳の約6分の1と非常に小さく、胃の中で固まりにくいため、乳幼児や高齢者、ペットにも消化吸収が良いことで知られています。一方、羊乳は水分が少なく乳固形分が非常に高いため、世界三大ブルーチーズの「ロックフォール」や「ペコリーノ・ロマーノ」など、高級ナチュラルチーズの原料として重宝されています。