ネット上の掲示板やSNSでは、奇抜な言動を繰り返す芸能人や急激な作風の変化を見せるアーティストに対して、安易に「あの人は躁鬱ではないか」と断定する書き込みが後を絶ちません。躁鬱を巡る芸能人の噂の真相を検証すると、ネット社会特有の認知の歪みが浮き彫りになります。
ネット言論において頻発する代表的な誤解は、「単なる気分の浮き沈みやエキセントリックな性格」と「精神医学上の双極性障害」の混同です。徹夜でハイテンションになってSNSを連投したり、過密スケジュールで過労困憊になったりする現象は、日常的なストレス反応や適応障害の範疇であることが多く、脳の器質的・生化学的な病理である双極性障害とは厳密に区別されなければなりません。
また、双極性障害を抱えるクリエイターの特徴として、「破滅的な私生活こそが芸術の糧である」と信じ込み、周囲のスタッフや家族を振り回す行動を正当化してしまう傾向が指摘されます。しかし、現場の関係者への取材や証言を総合すると、そうした無軌道な振る舞いは作品の質を高めるどころか、プロジェクトの破綻やレコーディングの中断、数千万円規模の損害賠償といった現実的な破滅をもたらすケースがほとんどです。「狂気による傑作」というナラティブは、消費者が後付けで消費するためのファンタジーに過ぎません。