作者である美内すずえ氏が『花とゆめ』などの誌面で描いてきた物語には、緻密な伏線が張り巡らされている。単行本化にあたって大幅な加筆修正を行うことで知られる彼女だが、未収録分も含めたエピソードの中には、真澄の身体的・精神的な限界を示すような描写が幾度となく登場する。
白泉社から刊行された既存の巻を読み返しても、彼の日常は常に緊張とストレスに晒されている。大企業を率いる重圧、義父との葛藤、そして抑えきれない愛。心身ともにボロボロになりながらも立ち続ける姿は、いつ倒れてもおかしくない儚さを漂わせている。
美内氏が描こうとしているのは、単なるハッピーエンドではないのかもしれない。悲劇的な試練を経てこそ試される愛の形。ファンが恐れる「死」の伏線は、実は彼の破滅ではなく、古い自我の崩壊と新たな再生を象徴しているとも解釈できるのだ。