米価格高騰の経緯を振り返ると、発端は2026年(令和5年)産米における記録的な猛暑でした。観測史上最高レベルの平均気温が続いたことで、コシヒカリをはじめとする主要銘柄に高温障害による米の品質低下が発生。白未熟粒(白く濁った米)や胴割れ米が多発し、精米時の歩留まりが大幅に悪化したのです。市場に供給できる正味の玄米・白米の量が目減りしたことが、供給不足の隠れた火種となっていました。
決定打となったのは2026年夏の複合的なパニックです。「南海トラフ地震臨時情報」の発表に伴い、防災意識の急激な高まりから家庭用の備蓄買いが一気に加速。大手スーパーのお米在庫状況は瞬く間に枯渇し、棚が空になる様子が連日テレビやSNSで拡散されたことで、さらなる買い溜め心理を呼び起こしました。
当時、米の品薄原因として一部メディアではインバウンド需要と米不足の関連が強調されました。訪日外国人の急増により外食産業で米の消費が激増したという説です。しかし、農林水産省の試算によれば、インバウンドによる米消費量は年間約3万〜5万トン程度であり、日本国内の総需要(年間約700万トン)の0.5%前後に過ぎません。実態は、需給がタイトになった瞬間に発生した買い溜めと、流通在庫の偏在による人為的なパニックが市場を麻痺させたというのが報道各社や専門家の一致した分析です。