なぜ私たちは、同じ砂糖水にすぎない液体を、イチゴやメロン、ブルーハワイとして認識してしまうのか。鍵を握るのは「クロスモーダル(多感覚)知覚」だ。人間が味を感じる際、舌の味蕾(みらい)が感知する情報は全体のわずか1割から2割程度にすぎないと言われている。残りの大部分は、視覚情報(色)と嗅覚情報(香り)によって補填されているのだ。
「赤い液体を見ながらイチゴの香りを嗅ぐと、脳は過去の記憶データベースから『これは甘酸っぱいイチゴだ』と自動的に判断を下します」と、感覚心理学者の佐藤氏は指摘する。緑色のシロップを口に含めば、たとえ中身が全く同じ果糖ブドウ糖液糖であっても、脳は勝手にメロンの青臭さやジューシーさを脳内で再現してしまう。この強力な脳のバグこそが、長年人々を騙し続けてきた正体だ。