カのように細い口吻を刺し込むのではなく、両者ともに皮膚を「物理的に損壊して」血液をすする。この粗暴な吸血メカニズムこそが、凄まじい痛みと長引く炎症の元凶だ。
アブの口器はハサミやナイフに酷似している。皮膚をジョキジョキと切り裂き、湧き出た血液をなめ取る。咬まれた瞬間、針で刺されたような鋭い激痛が走り、即座に鮮血がにじみ出るのはそのためだ。痛みによって人間が手を払う隙を与えつつも、執拗に何度も攻撃を繰り返す凶暴性を持つ。
ブヨの攻撃はさらに狡猾だ。皮膚を噛みちぎる際、唾液に含まれる麻酔成分と抗凝血物質を同時に注入する。噛まれた瞬間は痛みをほとんど感じない。出血点だけが皮膚にポツリと残り、異変に気づくのは半日から翌日以降だ。
体内に入ったブヨの毒素(アレルゲン)に対し、免疫系が激しいアレルギー反応を起こす。患部は熱を持ち、硬くしこりとなって腫れ上がり、夜も眠れないほどの激痛と猛烈な痒みが数週間から1カ月以上続くことも珍しくない。