深夜ラジオの黄金期を知るリスナーにとって、彼の声は青春の記憶そのものかもしれない。しかし、彼自身は過去のノスタルジーに一切の興味を示さない。象徴的なのが、VR空間と地上波生放送をリアルタイムで同期させた異色番組『ミューコミVR』だ。
VRヘッドセットを装着したパーソナリティが仮想空間を縦横無尽に動き回り、リスナーはアバター姿で同じ空間に集う。そこで交わされるリアルタイムの熱気とハプニングが、そのままニッポン放送の電波に乗って全国へ流れていく。単なる「ラジオの映像化」という安易なアプローチではない。リスナーとの物理的・心理的距離を極限までゼロに近づける空間体験の創出だ。硬直化しがちだったラジオ放送業界において、このハイブリッドな試みは生放送が持つ本来のインタラクティブ性を再定義した。