筑摩書房の書籍群などで見せる、自身を「鬱屈精神科医」と称する道化めいたスタンスも読者を惹きつけてやまない。科学的な知見を武器に患者を導くはずの医師が、自らの情けなさや優柔不断さを赤裸々に告白し、時には「占いにすがる」ような弱さまで平然と活字にしてしまう。この徹底した自己開示は、読者に奇妙な安心感を与える。
完璧な指導者として振る舞うのではなく、自分自身もまた暗部を抱えた不完全な人間であると認めること。これこそが、彼が読者から絶大な信頼を寄せられる理由だろう。他者の奇行を面白がりながら、同時に自分自身の愚かしさをも冷徹に観察する複眼的な視点は、単なるエッセイの域を超えて、一種の人間賛歌として機能している。