2010年代半ばから2026年代にかけて、ファッション業界では名門ブランドによるセカンドラインの廃止・ブランド統合が急速に進みました。マーク BY マーク ジェイコブスの本家統合に始まり、バーバリーの複数ライン(プローサム、ロンドン、ブリット)の単一「BURBERRY」への集約、ドルチェ&ガッバーナによる「D&G」の終了、シーバイクロエの段階的終了など、枚挙にいとまがありません。
この劇的な方針転換の背景には、大きく分けて3つの要因が存在します。
第1に、ブランド価値の希薄化(ダイリューション)に対する危機感です。セカンドラインが世界中で過剰に流通した結果、ブランドの希少性や高級感という最大の資産が損なわれ、「どこでも買える大衆ブランド」というイメージが定着してしまうリスクが顕在化しました。
第2に、ファーストラインとの顧客の共食い(カニバリゼーション)です。セカンドラインの品質やデザインが洗練されすぎた結果、本来ならファーストラインを購入していた顧客層が安価なセカンドラインへ流れてしまい、グループ全体の利益率を圧迫する逆転現象が発生しました。
第3に、デジタル化とSNSの普及によるグローバルな情報環境の変化です。かつては国やターゲット層ごとに異なるブランドラインを展開して棲み分けを図ることが有効でしたが、SNSであらゆる情報が瞬時に共有される現代では、複数のサブブランドが存在することは消費者に混乱を招くだけとなってしまいました。これを受け、多くのメゾンが「単一の強力なマスターブランド」にリソースを集中させる戦略へと舵を切ったのです。