世界的なパティシエである辻口博啓シェフをはじめ、第一線で活躍するプロが異口同音に語るのが、生地作りにおける「乳化」の重要性だ。パウンドケーキ作りの最大の失敗要因である「油脂と水分の分離」を防ぐことこそ、プロの仕上がりに近づく唯一の道である。
伝統的な洋菓子の製法において、バターと卵の温度管理は命とされる。冷蔵庫から出したての冷たい卵を投入すると、バターの脂分が固まり、あっという間に生地がボソボソと分離してしまう。卵は必ず20度前後の常温に戻し、数回に分けて少しずつ加えながら、その都度ホイッパーで滑らかな状態になるまでしっかりと繋ぎ合わせる。この丁寧なプロセスが、焼き上がりの美しい膨らみときめ細やかな生地の組織を決定づけるのだ。