この理不尽な偏見に対して、昭和の言論界や文学界も無関心ではいられなかった。無頼派の作家として知られる坂口安吾は、その鋭利なエッセイ群のなかで、日本人の根底に潜む「イエ」制度のイデオロギーや封建的な迷信に対する痛烈な批判を展開している。
家名や婚姻の都合を優先し、女性の気性をコントロールしようとする男性優位社会の都合こそが、迷信を補強し続けた本質であると安吾らは喝破した。都合の悪い事象や婚姻の不成立を「丙午の生まれだから」という外的な呪いのせい転嫁する風潮。文学者たちが暴こうとしたのは、怪物としての女性ではなく、迷信を免罪符にして女性を抑圧し続けた社会の側の歪んだ心理だった。