下関といえば、何をおいてもフグ(現地では縁起を担いで「フク」と呼ぶ)だ。特に冬から春先にかけて旬を迎えるトラフグは、独特の強い弾力と噛むほどに広がる上品なアミノ酸の旨味が別格の存在感を放つ。
馬関街では、高級料亭で出されるような極上のトラフグ握りが1貫数百円という破格の値段で並ぶ。白身が放つ美しい透明感と、職人の繊細な包丁の仕事。ポン酢ジュレと寸胴ネギを添えた一貫を口へ運べば、引き締まった身が心地よい歯ごたえを返し、後味に爽やかな甘みが残る。
握り寿司だけでなく、大鍋で豪快に煮込まれた「ふく汁」も外せない。アラから抽出された濃厚な出汁と味噌の風味が、海風で少し冷えた身体の芯まで染み渡る。この一杯こそが、下関の海の豊かさを最も純粋に物語っている。