「法律がないから重い罪に問えないのなら、その法律を変えるしかない」——判決後、深い絶望の中にあった遺族たちは立ち上がり、持病による危険運転を厳罰化するための署名活動や法務省への陳情を精力的に開始しました。
同様の悲劇を二度と繰り返させないという遺族の強固な意志と、数十万人規模の署名に後押しされた世論のうねりは国政を動かします。2013年11月、新たな法律として「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転死傷処罰法)」が国会で成立し、翌2014年5月に施行されました。
この新法により、てんかんや重度の低血糖症など、正常な運転に支障が生じる持病の影響を認識しながら運転し死傷事故を起こした場合、最高で懲役15年が科される類型が新設されました。鹿沼市の事故は、日本の交通法規の不備を是正させ、交通犯罪に対する司法の枠組みを根底から塗り替える契機となったのです。